毎週月曜日更新! 死体で遊ぶなゲーマーたち

洋ゲー冒険家のマスク・ド・UHが、素晴らしきゾンビ映画とゲームの関係についてご案内!
そもそもゾンビとは何なのか?
ゾンビには種類があるのか?
ゾンビと呼べる範疇はどこまでか?
アタマを撃たないと死なないのは何故?
足が遅いゾンビと早いゾンビの違いとは?
その生態の解明から対処法までを古今東西で作られたゾンビ映画を元に徹底研究。
時にはゲストをお招きしてのゾンビ放談もありのB級カルト系バラエティWEBコラムです。

豪華ゲストを招いてのデッドライジング2対談企画も予定されています!

TOP > ゾンビ映画史で知る"生ける屍"の変遷(PART 4) ~アジアのゾンビ映画事情

第6回

| 2010年09月06日更新

ゾンビ映画史で知る生ける屍の変遷(PART4) ~アジアのゾンビ映画事情

webmaga6_img01.jpg  早くも更新一ヶ月目を突破してしまった<死体で遊ぶなゲーマーたち>だが、ゾンビに関する話題は尽きることがない。生ける屍の変遷の歴史を辿るメインテーマも4回目に突入し、いよいよネタがニッチな方向に傾こうとしている。
 これまでは欧米で主流のゾンビ映画......ハリウッドからヨーロッパまでのゾンビをザッとおさらいしてみたが、それでも全て語り切れた訳ではない。スパニッシュ・ホラーの傑作として名高い『エル・ゾンビ/落ち武者のえじき』('71年)や、イタリアン・ゾンビの方向性を決定づけたグロテスク系ゾンビ映画の傑作『悪魔の墓場』('74年)、フランケンシュタインの物語にゾンビ要素と日野日出志先生の怪奇漫画がリミックスされたかのような味わいのある、ルチオ・フルチ監督によるゾンビ奇譚物語『墓地裏の家』('81年)、タイトルの威勢の良さとは裏腹に退屈すぎる内容で客を凍らせた『ナチス・ゾンビ/吸血機甲師団』('80年)などなど、ユーロ圏のゾンビ映画は掘り返し始めるとキリがないので、このあたりの詳細が知りたい方は、日本有数のゾンビニュースブログ「ZOMBIE手帖」の管理人であり、ゾンビ博士としても知られる伊藤美和氏による世界最強クオリティーのゾンビ映画研究書『ゾンビ映画大事典』(洋泉社刊)を紐解いてほしい。

 さて、ユーロ系ゾンビ映画の話はさておき、ここからがメインテーマである。これまでの連載では前述の通り欧米のゾンビ映画ばかりだったが、やはりここは日本だし、自分は日本人だし、そもそも『DEAD RISING』シリーズは日本が産み出したゲームであるからして、やはり極東アジア方面におけるゾンビ映画事情について触れないワケにはいかないだろう。しかし、冷静になって考えてみれば、アジアにゾンビなんているのだろうか?もちろん、いる。

webmaga6_img03.jpg  その筆頭ともいえるのが、香港が産んだ偉大なるゾンビモンスター"キョンシー"だろう。日本では『霊幻道士』('85年)が最も有名なキョンシー映画だが、その元祖は我らがサモ・ハン・キンポーが監督/主演した『妖術秘伝・鬼打鬼(燃えよデブゴン8 鬼打鬼)』('81年)にあるとされている。もっとさかのぼれば、英国の名門映画製作会社ハマー・フィルムが、その繁栄の末期に、当時は香港で最大手の映画製作会社ショウ・ブラザースと手を組んだ『ドラゴン VS. 7人の吸血鬼』('74年)なんて作品もあるが、これがまた面白いから始末が悪い(ほめ言葉)。馬に乗ったゾンビ剣士軍団による農村襲撃シーンや、吸血鬼ドラキュラに対するカンフーバトル、グロ系の拷問シーンなどが満載なのにも関わらず、ちゃんと元祖ヘルシング教授のピーター・カッシングが主演なんだから、本当にこの映画はどうかしている。未だ日本ではDVD化されておらず、鑑賞するには海外版のDVDか、とっくに廃盤になってる日本版のVHSを探し出すしかないという難易度も含めて、アジア産オールドスクール系ゾンビ映画の最高傑作の1つとしてレコメンドしておきたい。
 話をキョンシーに戻すと、やはりキョンシーと聞いて読者諸兄が連想するのは、中華服に身を包み、両手を前に突き出してピョンピョン跳ねる姿ではないだろうか? 青白くドーランを塗ったくられた表情に欧米産ゾンビ映画との共通点は見受けられないが、棺桶や土葬済みの死体が甦ってくる点は共通しているし、呪術・妖術で甦るという部分はブードゥー教にも通じる縁起の悪さである。故ラム・チェンイン演じる道士様のキャラも手伝い、ホラーというより完全ギャグ路線+香港映画特有のパクリ精神がリミックスされて、キョンシー映画はゾンビ映画の系譜でありながら、全く違った方向に猛スピードでピョンピョン飛び跳ねて行ってしまった。 webmaga6_img05.jpg  では、香港映画が皆キョンシーばかりかというと、決してそんなことはない。キョンシーというキャラクターが強烈だっただけで、香港及び台湾、アジア映画のジャンルには、呪術映画と呼ばれるホラーサスペンスの系譜が存在する。主に仏教 VS. 呪術師の対決がメインで、呪術師は死体をグッチャングッチャンな描写の儀式でゾンビとして甦らせ、呪いをかけた相手を襲撃させるのが物語の流れ。内容よりもド派手で吐き気を催すグロ描写と、ゾンビと呼ぶには強すぎる悪霊との戦いは、正確にはゾンビ映画とはチョイ違うかもしれないが、細かいことは気にしないのがアジア映画の正しい見方である。
 呪術系ゾンビ映画の傑作としては『死霊の受胎』('86年)という作品がオススメ。内容は一言で説明するならば<超残虐>。あらゆるシークエンスで人が創意工夫を凝らしたスタイルで殺される様がマジでスゴイ!
 クライマックスのゾンビ軍団対仏教徒の戦いは、欧米のゾンビ映画には無いダークな雰囲気と、思い切りの良すぎる残虐描写が圧倒的。これまたDVDは現時点で未発売の作品だが、VHSのレンタル落ちを気長に探せば、きっといつか鑑賞できる。

webmaga6_img04.jpg  こんな感じで進化と退化を繰り返すアジアのゾンビ映画は、キョンシー以降は低迷。その流れを変えたのは、やっぱりカプコンの『バイオハザード』シリーズだった。ゲームの完成度の高さから、『バイオ』シリーズの人気がアジア地域でも爆発。ようやく、ロメロスタイルのゾンビが、ゲームを通してアジアに浸透していったという流れだ。その影響をモロに受けていたのが『香港ゾンビ』('98年)。もう原題が『BIO ZOMBIE』なんだから、やはりゲームのチカラは偉大である。このスタイルが定着すると、香港でも欧米っぽいゾンビが登場するホラー作品が増えて、逆にキョンシー系が減るという、ちょっと淋しい現象も見受けられる。

webmaga6_img02.jpg  最後に、アジア映画で最もトンデモないゾンビ映画を1本紹介しておこう。そのタイトルは 『サーズ・ウォー(SARS WARS)』。2004年にタイで制作されたゾンビ映画で、題名の通り新型インフルエンザのSARSのパンデミックをネタにした壮絶な作品だ。しかし、最近のタイ映画に見られるスタイリッシュさも盛り込まれており、例えるなら『ナチュラル・ボーン・キラーズ』('94年)のような映像編集と表現に挑戦しているのが興味深い。
 え? 日本のゾンビ映画が無いじゃないかって? それは語り出すとまた長くなるので、別の機会に譲ろう。日本のゾンビ映画を語るならば、今はとにかく『屍病汚染』を観るのが先決なのだから!

【マスク・ド・UH】

洋ゲー冒険家。
某海外デベロッパーの元社員にして、現在はフリーライターとなり各方面に洋ゲーに秘められた真の魅力を伝える日々を送る。
今回は素晴らしきゾンビゲームの金字塔『DEAD RISING 2』の世界を補完すべく、ゾンビ映画、ゲーム、そして周辺文化を考察するために墓場から甦った厄介者として参上した次第。

スローガンは"ZOMBIE OR DIE"だ!……どっちにしろ死んでるけどな!

▲ページの先頭へ

Copyright © 2010 Tape It Or Die. All rights reserved.