毎週月曜日更新! 死体で遊ぶなゲーマーたち

洋ゲー冒険家のマスク・ド・UHが、素晴らしきゾンビ映画とゲームの関係についてご案内!
そもそもゾンビとは何なのか?
ゾンビには種類があるのか?
ゾンビと呼べる範疇はどこまでか?
アタマを撃たないと死なないのは何故?
足が遅いゾンビと早いゾンビの違いとは?
その生態の解明から対処法までを古今東西で作られたゾンビ映画を元に徹底研究。
時にはゲストをお招きしてのゾンビ放談もありのB級カルト系バラエティWEBコラムです。

豪華ゲストを招いてのデッドライジング2対談企画も予定されています!

TOP > ゾンビ映画史で知る"生ける屍"の変遷(PART1)~ゾンビ誕生の背景

第1回

| 2010年08月02日更新

ゾンビ映画史で知る

 ゾンビ......もはやこの言葉の意味を知らない人は地球上に存在しないのではないか? "生ける屍"を総称する意味で使用されてはいるが、そもそも"生ける屍"なんて
想像上の産物。フランケンシュタインや狼男と同じモンスターなのに、なぜゾンビだけに人気が集中し、続々と映画が作られ、ビデオゲームでは主人公の行く手を阻む大量の雑兵として登場するのか? その謎を紐解くには、やはりゾンビの歴史と起源を知らなければいけない。なぜゾンビは人肉を喰らうのか? ゾンビに寿命はあるのか? ゾンビに知能はあるのか? ゾンビには種類、種族は存在するのか? 冷静に考えれば考えるほど謎だらけのゾンビという存在を、膨大な資料、教本、映像と共に考察してみたい。
 まず皆さんが「ゾンビ」と聞いて連想するのは、全身土気色になり、うつろな目で「あゔ〜」「ゔぉお」とか呻きながら、おぼつかない足取りで生前の記憶にあった場所を彷徨う姿ではないだろうか? そして生存者(つまり生身の人間)を発見すると集団で襲いかかり、その肉を喰らう。襲われた者は、軽く噛み付かれただけでゾンビ化が感染し、死に至った後にゾンビとなってしまう。そうなったらもう以前の彼ではない。ゾンビとなった、かつての友人や恋人に話は通じない。その活動を止めるには頭部を破壊するしかないのだ......。
画像:マスク・ド・UH至極のゾンビ映画コレクションPART1 一般的に知られているゾンビのイメージは、こんな感じだと思う。しかしこのゾンビ像は、ある映画から生まれ、その後定着したものだ。そう、ジョージ・A・ロメロ監督による、すべてのゾンビ映画の夜明けとなった作品『ゾンビ DAWN OF THE DEAD』(1978年)と、その前作にあたる『生ける屍の夜 NIGHT OF THE LIVING DEAD』(1968年)である。ある日、突然に死者が甦り、人間を襲ってくるという設定は、ロメロ作品で完成されたゾンビ像であり、それ以前のゾンビは同じ"生ける屍"でも、その生態は少し違った。これらのゾンビは"モダン・ゾンビ"と区分されることになる。そして我らが『DEAD RISING 』シリーズもまた、この"モダン・ゾンビ"が真の主役であることは間違いない。ではモダン・ゾンビ以前のゾンビとは何だったのか?

 そもそもゾンビとは、南米ハイチ諸島や西アフリカに伝わる土着民間信仰"ブードゥー教"を原典とする呪術の一種で、農作業などの過酷な労働を人間の代わりに務めさせる傀儡のような存在だった。つまり労働力としてのゾンビであり、死体を甦らせるのではなく、生きた人間に(犯罪者などに対する刑罰として)秘薬を投与して、仮死状態に陥れてから労働に従事させるというワケだ。なるほど、これなら給料も払う必要もない。ゾンビとは、そもそも労働力確保と社会的制裁を兼ねた儀式によって誕生した一種の職業であり、人を襲うための存在でもなければ、怪物でもなかったのだ。
画像:マスク・ド・UH至極のゾンビ映画コレクションPART2 それがなぜ人を襲う怪物と変遷したのかは諸説あるが、最も影響を与えたのは20世紀なってハイチを統治下に置いたアメリカ合衆国の国策である。ハイチ島民を"呪術を使う野蛮な人間"という認識を植え付けてハイチのイメージダウンを狙い、ハリウッド映画を利用して宣伝(当時の合衆国政府が仕掛けた啓蒙活動の1つに、最新テクノロジーの"映画"を利用)したのである。その時代のゾンビ映画は、魔術師が死者を秘薬で甦らせ、美女を誘拐させたりする内容が多く、感染したり人肉を喰らったりするような行為には走らなかった。大体彼らは死人が墓から甦ったというより、普通の生活を送っていた人間が、呪術と秘薬によって意思を奪われて、"生ける屍"と化した。そんな意味でのゾンビであり、モダン・ゾンビとは根本的に解釈が違う。

画像:マスク・ド・UH至極のゾンビ映画コレクションPART3 それが一転して恐怖の存在になったのは、前述のジョージ・A・ロメロによる映画作品からである。人肉を喰らう凶暴なゾンビが誕生した背景には、まず初出典となる『生ける屍の夜』が制作された時代背景を考察せねばならない。本作が作られた1968年という時代は、アメリカ合衆国が混迷を極めた時代でもある。黒人差別撤廃を目指す公民権運動によって国内の人種間の対立が激化、共産主義国家の侵略を阻むという大義名分によって開戦したベトナム戦争は、北ベトナム軍の神出鬼没なゲリラ戦と人海戦術によって翻弄され、勝利はおろか撤退もままならない状況。厭戦気分が国内に万延して既存の価値観は崩壊し、若者はロックやドラッグなどに溺れて国家の在り方を否定するまでに至る。『生ける屍の夜』は、そんな社会情勢に対する不安がピークに達したことを象徴するような内容といえるだろう。話の通じない相手、見かけは同じ人間であり、かつては家族や友人、恋人だった者が突然に襲いかかる恐怖は、そのまま人種偏見や共産主義に対する恐怖に置き換えられる。それを最も象徴しているのが、本作の主人公だ。彼は利発で行動力のある黒人青年。わがままで身勝手な白人連中を守るために孤軍奮闘し、なんとか生き残るものの、最後はゾンビに間違えられて州兵の部隊に射殺されてしまう。ゾンビ映画における絶望と悲しみ、不安と恐怖に加えてカニバリズム(人肉喰い)を描くことで、ロメロは呪術的存在でしかなかったゾンビに吸血鬼伝説を盛り込み、さらに時代背景による社会不安に乗じた全く新しいタイプのモンスターを誕生させたのである(ちなみに、後年になってロメロ本人は「そんな深い意味のある映画ではない」的な発言をしている)。

画像:マスク・ド・UH至極のゾンビ映画コレクションPART4 しかし、ここで重要なツッコミどころとなってくるのが「なぜ死者が甦り、人を襲うようになったのか?」という部分。つまり原因である。『生ける屍の夜』では、ゾンビが生まれた原因についてのマトモな言及はない。謎の宇宙放射線が地球に降り注ぎ、死者が突然活動を始めた...というだけで、まったく要領を得ない。それは続編『ゾンビ DAWN OF THE DEAD』でも科学的な説明は一切されず、とにかく、もう地上は死者で溢れかえってしまっているのだ。

「地獄が満員になり、死者が地上に溢れた」

『ゾンビ』の劇中には、そんな名ゼリフが登場するが、それで納得できる観客はいないだろう。次回はゾンビが無尽蔵に増える原因、映画によって変化するゾンビ誕生までのバリエーションについて考察してみよう! それを紐解くことで『DEAD RISING 2』というゲームは10倍も100倍も面白くなるのだから!

【マスク・ド・UH】

洋ゲー冒険家。
某海外デベロッパーの元社員にして、現在はフリーライターとなり各方面に洋ゲーに秘められた真の魅力を伝える日々を送る。
今回は素晴らしきゾンビゲームの金字塔『DEAD RISING 2』の世界を補完すべく、ゾンビ映画、ゲーム、そして周辺文化を考察するために墓場から甦った厄介者として参上した次第。

スローガンは"ZOMBIE OR DIE"だ!……どっちにしろ死んでるけどな!

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