戦国BASARA 真田幸村伝

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THE ACTION OF 真田幸村伝

今作『戦国BASARA 真田幸村伝』はこれまで以上に爽快感が増したアクション、
真田幸村の生涯をドラマチックに描くイベントシーンと、こだわりにこだわり抜いて制作を行っている。
本コーナー「THE ACTION OF 真田幸村伝」ではアクションについては
アクションコーディネーターの活劇座 古賀亘氏と山本シリーズディレクター、
イベントシーンについてはアクション監督のユーデンフレームワークス 園村健介氏と田中ディレクターに語っていただいた。
『戦国BASARA 真田幸村伝』の制作の裏側をボリュームたっぷりのインタビューでお届けするぞ。

対談者紹介

田中俊宏 プロフィール 「戦国BASARA 真田幸村伝」ディレクター。ゲーム部分の制作全般を担当。代表作に「エクストルーパーズ」「ガイストクラッシャーゴッド」など

園村健介 プロフィール 1981年生まれ、学生時代に倉田アクションクラブに入団、スタントの基礎を学ぶ。退団後、フリーの時期を経て2003年ユーデンフレームワークスに所属。数々の作品でスタントプレイヤーとして活動しつつ『LOVE DEATH』('06)にてアクション監督としてデビュー。その後は映画、TV、ゲーム等でアクション監督として活動中。
主なアクション監督、アクションコーディネート作品に『GANTZ』シリーズ('11)、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』シリーズ('14)('15)、『恋する ヴァンパイア』('15)、『珍遊記』('16)、フルCG映画『バイオハザード』シリーズ('08)('12)、ゲーム『デビルメイクライ4』('07)、等。
共同プロデューサーを兼任した『BUSHIDO MAN』('13)はモントリオール他、世界10ヶ所の映画祭に正式招待され、ジャパンアクションアワード2014に於いてベストアクション作品賞、他三部門を受賞。

対談者紹介

山本真 プロフィール 『戦国BASARA』を立ち上げシリーズを通してディレクターを務める。ゲームのみならず、漫画、TVアニメ、劇場版アニメ、舞台、TVドラマ、宝塚など関連コンテンツの監修として『戦国BASARA』シリーズ全体に関わる。「真田幸村伝」ではシリーズディレクターとしてキャラクター&物語制作に携わる。

古賀亘 プロフィール 株式会社活劇座、代表取締役。映画『イン・ザ・ヒーロー』の主人公:本城渉のキーパーソンモデルとなった男。モーションアクター及びアクションコーディネイターとして、これまで約500タイトルのモーション収録に参加している。

第1回:初『BASARA』コンビが生み出す新しい幸村

田中『戦国BASARA 真田幸村伝』ディレクターの田中俊宏(たなか としひろ)です。よろしくお願いします。

園村今回、ムービーシーンの監督をさせていただきました、ユーデンフレームワークスの園村健介(そのむら けんすけ)です。よろしくお願いいたします。

田中僕も園村監督も、今回が『戦国BASARA』シリーズ初参加なんですよね。まずは『戦国BASARA』シリーズの印象をお話ししていこうと思います。『戦国BASARA』シリーズは10年続いていますけど、1作目が出た頃、僕は学生でした。初めて見たときはキャラクターが立っていて破天荒だな、カプコンの得意な爽快なアクションが楽しめるというゲームだな、という印象がありました。

園村僕も『戦国BASARA』はぶっ飛んだキャラクターだなという印象でした。僕らが歴史の授業で習ったときに受ける、武将たちのイメージってあるじゃないですか。そういうものと全然違うなと(笑)。

田中そうですよね(笑)。ちなみに『幸村伝』でも、キャラクターやアクション、ストーリーや世界観などシリーズの大事なところは、シリーズディレクターの山本がしっかりと監修しています。僕の方はデモシーンのディレクションなど、いろんな新しい挑戦をさせていただきました。ところで、園村さんは『BASARA』シリーズっていつくらいからご存知でしたか? 

園村1作目が出たときから、存在自体は知っていました。ちょうど『デビル メイ クライ』の3作目くらいが出たあたりに、コラボがやっていたかなと。

田中それで今回、『BASARA』のお仕事を受けられていかがでしたか? 僕としては『幸村伝』のお話をいただいたときに、まさか学生時代から知っているシリーズのディレクターに抜擢されるとは思わなかったので、驚いたというのが正直なところで。

園村まずはやっぱり、幸村が槍を2本持っているじゃないですか。長物を2本で扱ったりというのは、実写だとすごく難しい部類に入るので、そこが印象的でしたね。あと、政宗はさらに……(笑)。
※インゲームアクション編で古賀さんが言っていたことと同じですね

田中まだ長いのを2本というのは想像できますけど、刀を6本持っているって、「そもそもどうやって持っているの?」って思うところはありますよね。

園村指のところ、すごい痛いんじゃないかなあと(笑)。そこの武器のところなども課題だなと思いましたね。今回は、まず台本をいただいて、それをもとに、字コンテを切ってカプコンさんに確認していただいて、それからビデオコンテを撮影して。それがOKいただければ、収録に臨むという形でやらせていただいていました。最後は仕上げのカメラワークの指示だったり、アニメーションの修正などをさせていただきました。

田中今まで、イベントシーンは山本ディレクターが綿密に見ていたのですが、今回園村監督が来ていただけるということで、大部分を園村さんにお任せして、いい味を出していただいています。その辺も、実際ゲームで観る方には楽しんでいただきたいなと思います。

第2回:現場には生ものの熱さがある

田中『戦国BASARA』シリーズでは初めてビデオコンテという方法で作ったんですよね。そもそも、シリーズ作品ではアニメなども使っていたんですが、『幸村伝』では新しいことに挑戦したいということで、実写の監督にアクションを見ていただこうという話があがりまして。下村勇二(しもむら ゆうじ)監督とイベントシーンを作っていた『デビル メイ クライ』シリーズの制作関係者に相談したところ、巡り巡って園村監督をご紹介いただいて。

園村そうでしたね。

田中それで僕はビデオコンテの撮影というのに初めて立ち会いまして。ビデオコンテは、監督と役者さんがその場で作り上げていく、“生ものの熱さ”があって。それをゲームに取り入れられるとすごく良くなるんだろうなと思いながら見ていました。その生もののビデオコンテから、実際にゲームのデータにしていく流れというものがありまして。まずは、園村監督に撮っていただいたビデオコンテ、そのビデオコンテで演技していただいた役者さんにモーションキャプチャーもやっていただいて。その動きをデータ化し、最終的にゲームのキャラクターモデルや背景に流し込んで調整してゲームのイベントシーンになると。そういう流れで作っておりました。ちなみに、1章の“弁丸の初陣”というシーンでは、父親の昌幸に初めて戦場に連れてこられて、いきなり敵のところで煽られ、「これは試練だから生き残れよ」と(笑)。獅子が千尋の谷に突き落とすじゃないですけど、急展開のシーンなんですよね。ここではいっぱい敵がいて、取り囲まれているんですけど、Vコンの時点ではアクターの方じゃなくて撮影の現場にいたゲームデータを作るスタッフを人数合わせで参加してもらったりしましたね(笑)。ああいう感じでアクションシーンを大人数で撮影するということは、よくあることなんでしょうか?

園村実写だとよくある感じなんですけど、モーションキャプチャーだと撮れる人数の制限だったり、予算の問題だとかもありますので。絡むのは多くて3人というところです。それをデータで何人も増やしていって、という感じですね。

田中今回はモーションキャプチャーも大変でしたよね。そもそも、スーツの数が全員分なくて、「シーンが終わったら1回脱いでください」、ということもありましたね(笑)。撮影も、いっぺんに大人数というのはそもそも技術的には難しかったり。何回か交代していただいて、じゃあここのブロックの3人を撮って、という風にして合わせましたよね。

園村懐かしいですね。

田中そういえばこのシーンのVコンって、撮影初日でしたよね。

園村最初でしたね。ここのシーンを撮ってみていろいろ分かってくることがありましたね。子供時代のキャラクター性だったり。

田中新キャラクターは、まだイマイチ掴めないというところがありましたよね。

園村昌幸とかも、台本を見てある程度は考えている部分はあるんですけど、実際に役者さんに入ってもらうと、役者さん自身のアイデアもあるので、そこのすり合わせで、どういう関係性にしていくかというのを決めていく作業もあります。このとき、スケジュール自体もゆったり目に組んで、セッションする時間を多めに取っていました。後半にいくにつれて、段々と分かってくるので……。

田中確かに、後半はペースが上がっていきましたね。

園村最初や、初登場のキャラクターがいるときは多めに時間を取っていました。弁丸や梵天丸は子供ですけど、大人が演じているじゃないですか。それでちゃんと子供らしく見えるかなとかいうところもありました。

田中Vコンではヒゲが生えてたりする、いい大人でしたからね(笑)。僕らもVコンって初めてだったので、「こんな風に撮るんだ」とか、「そもそも何を準備したらいいんだろう」と思っていましたが、それはやっていくうちに慣れていきましたね。

ワイヤーアクションで作る『BASARA』ならではの動き

田中2章のお話で、アクション映画とかの撮影シーンでよく見る、ワイヤーで人を吊って撮影したところもありましたね。あれは、そういう吊りができるスタジオで撮影したんですけど、深夜しかまとまって借りられないため、夜の11時から始まって朝の5時までの収録になり、こんな夜中にやるんだとビックリしました。しかも、僕は大阪から出張してきたので、どのタイミングまで大阪で働いて、1回休んで、いつ東京に行けばいいんだろうという組み立ても難しかったです(笑)。

園村睡眠時間は大丈夫でしたか?

田中さすがに次の日は休ませてもらいました(笑)。そうえば、スタジオはかなり天井が高かったですけど、アクション専用のスタジオなんですよね。

園村ワイヤーを使うときはいつもあのスタジオで撮っていますね。

田中この利家と勝家のシーンは、僕は直接参加できていなかったんですが、他のシーンでも吊りの場面は見ていました。準備は大変ですよね。すごい高いところに上って、天井のところにフックつけて引っ掛けて。安全を十分に確認して。綱引きみたいギュって持ち上げるのも人力じゃないですか。大変だなあと思いながら見ていましたが、やはり監督はアクションならではの仕掛けをよく使われているんですよね?

園村そうですね。普通の人間では表現しきれないものが多いじゃないですか。とくにゲームには。

田中ええ。なかでも『BASARA』は多いですね(笑)。槍のコプターで空飛んじゃったりしますし(笑)。

園村極力、そう見えるようにと気遣っています。Vコンの撮影を現場で見ている人にはあまりそうは見えないかもしれないですけど(笑)。

田中指示出す方も、イメージがしっかりしていないと、飛ぶ方も大変ですよね。でも園村監督はそのへんをバッチリやっていただきました。すごく高いところから飛び降りるのも、モーションキャプチャーだと実際にやるのは難しいので、飛んで落ちているポーズを寝そべって撮って、ゲームのデータにするときは縦にして、飛んでいる風に見せて繋げるという作り方をやっていました。

園村90度視点を変えたりとかもしましたね。Vコンを見てもらうときに、なるべくイメージしやすいように努力しています。

田中それは随所にありましたね。

園村人が動けない分、カメラが動いて移動している体にするとか。

田中最終的にはそういう工夫がゲームになったときにおもしろく見えてくるなと思いました。

園村よかったです。現場では「伝わるかな?」って思っていたので。

田中ユーザーの人にも伝わっていると思いますよ。撮り方で苦労したのは、モーションキャプチャーでしょうか。たくさん箱を組み合わせて階段を作ったりとか、普段はそうは使わない棒を駆使したりとか。結構大変でしたね。準備すれば大掛かりなこともやれるVコンよりも、その場にあるもので何とか再現するモーションキャプチャーのほうが頭をヒネったような記憶があります。

園村そうですね。スタジオに入っていろいろ道具を見て「あ、この形は使えるかも」と。今回、カプコンさんのスタジオに行ったのが初めてだったので、どういう物があるのかは、あらかじめ写真だけ送っていただいたんですけど、写真だとやっぱり平面なので、イマイチ想像しづらいところもあって。実際に現場行って、見て、こう使えるなと考えたりしていました。

田中その辺の生もの感もおもしろいですね。

Vコンでも細部の演技はしっかりと

田中今、北条が逃げ出すシーンを振り返って観てみましたが、Vコンテって絵コンテみたいに分かればいいくらいで撮影するのかなって思っていたんですけど、結構ちゃんと役者さんに演技していただいたなというのが印象深かったですね。とくに、このシーンで北条を演じていただいた島津さんが、正直、実際に北条になってもそのままな感じというか、演技そのままにゲームになったなと。短いシーンですけど、そう感じていたんです。このVコンを声優さんのボイス収録のときに、このイベントシーンはこんな感じですと見せながら合わせていただいたり、印象をお伝えするために使っていたんです。最終的にどうなるかという演技をしていただけたことで、すごくよかったなと。逆に声優さんが張り合っちゃって、「そこまで声を張らなくてもいいですよ」となるときもあったぐらいです。逆に引っ張られるから音声をオフにして、映像だけ観ていただいたこともあって。

園村そんなこともあったんですね。

田中そもそも、今回のVコンに関しては、どんな風に役者さんを選ばれたのでしょうか。

園村基本的には、こういうVコンを撮ったりするときに、よく手伝っていただく方なんですよ。

田中園村ファミリー的な。

園村そうですね(笑)。もちろん実写でも出演していただいていて。基本的にはアクションができること、お芝居もできる人を選んでいます。実写でも「強い敵役がいるんですけど、誰かいい人いないですか?」って言われたときによく紹介する方たちなんですね。

田中幸村を演っていただいた三元雅芸(みもと まさのり)さんは、『デビル メイ クライ』シリーズでもダンテを演っていただいたりとかもしていて。やっぱりお上手というか、カッコイイですよね。普通に実写映画にも出演されていますし。そんな方に、子供役もやっていただいて……。さすがに子供はゲーム以外では演る機会はないと思いますけど(笑)。昌幸や北条を演っていただいた島津健太郎(しまづ けんたろう)さんは、有名な作品にもたくさん出演されていて。オジさん演技というか、北条みたいなコミカルな役も幅広く演っていただきました。

三元 雅芸さん

三元 雅芸さん

島津 健太郎さん

島津 健太郎さん

園村すごく明るい方なんですよ。コミカルなことも、「こうしたらもっとおもしろいかな」と提案してくださったり。皆さん、モーションキャプチャーに慣れているので、使いどころというか「こういう動きがあったほうがいいよね」という提案をくれるんです。

田中動きのところも、さらに足していってくれると。動きで言うと、政宗をやっていただいた辻本一樹(つじもと かずき)さんも。あの方も時代劇によく出演されていますよね。『戦国BASARA』も戦国なので、一応、戦国時代の戦国武将、侍の話ではあるんですけど、元々がド派手だったり、新しい解釈でキャラクターを作っているので忘れがちなんですけど、「侍のお辞儀はね、こうするんだよ」というのを辻本さんがおっしゃっているのを見て、たまに「あ、これ戦国時代だった」って思い出すこともあって(笑)。

辻本 一樹さん

辻本 一樹さん

園村京都で長いことずっと時代劇をやられてきている方なので。そこらへんの所作に関しては、僕よりも詳しいですから「ここはどうしたほうがいいですかね?」って聞いたりもしています。演じ分けもしっかりできますし。

田中複数の役を演っていただきましたね。

園村このときはこんな感じ、というのが、Vコンでは「あ、また同じ役者さんだ」って思うじゃないですか。そこで違う印象になるように、皆さん工夫してもらって。予習もしっかりしていただきました。

田中過去作の動画などを観ていただいて、キャラクターを研究していただいているなと思いました。だから北条とかも、生き写しみたいだって(笑)。信之を演っていただいた林田さんはガタイがいいので、それだけで信之のイメージが伝わるなと思いましたし。今回、いい役者さんを使っていただけたなと思います。そういえば、この対談企画の別の回で、ゲームのモーションキャプチャーをされた活劇座の古賀亘(こが わたる)さんと、うちのシリーズディレクターの山本が対談しているんですけど、ゲームの政宗を演っていただいた田中大登(たなか ひろと)さんという方が、たまたまアクションシーンで綱を引いたり、周りのザコ敵役の手伝いのためにたまたまスタジオにいらっしゃって。僕は園村さんが呼んで、何かの役で出るんだと思って「あ、田中さんじゃないですか、『BASARA』の撮影ですよね」って声かけたら、「あ、そうですけど」って話で。でも、あのときは本当にたまたま呼ばれていたそうですね。

園村僕も全然知らなくて(笑)。本人も現場に来たら「あれ? これってもしかして『BASARA』ですか?」って。武器を見て思ったらしくて(笑)。

田中あははは、他にはないですもんね、『BASARA』の武器は(笑)。

園村だから僕も後から知ったんです。大登くんが「実は、政宗演っていたんです」って聞いて。 政宗の話はコチラ

第3回:アクションシーンはカーアクション!?

田中ここからは、アクションシーンについても伺っていきたいと思います。園村監督はアクション監督という一面もありますので、一番お力をお借りしたかったところでもあります。先ほどもお話しましたが、イベントシーンだけ別の監督を立てるのは初めての試みだったので、結果的にできたイベントシーンを見ると、園村監督にお願いしてよかったなと思っています。序章のシーンは、ユーザーさんが一番最初に観る場面なので、印象付けたかったところもあり、アクションを見せたかったシーンなんですね。大坂城の下で、幸村が多勢を相手に死闘を繰り広げているシーンです。ここも新しい幸村の新アクションで“天羽”という、敵から敵へ跳びまくって斬っていくというものなんですが、これを撮るときにまだゲームがそこまで固まっていなくて、園村さんにお見せできるイメージがあまりなかったと思うんです。確か、モーションキャプチャーの映像を観ていただいて、こんな感じというのだけだったかと。園村監督もよく分からないなか、取り組んでいただいたと思うんですが、より迫力のある天羽のアクションを作っていただいたなと思っています。たくさんの人に囲まれているなかで、先ほどの利家・勝家以上の派手な吊りアクションだったなと思うんですが、アクションやカメラワークでこだわられた部分をお聞かせください。

園村僕が最初に指示書をいただいたときはただ“跳ね”と書いてあったんですよね。通称・跳ね攻撃と。跳ねを取り入れたアクションシーンでということで、Vコン撮影前に送っていただいたモーションキャプチャーの映像と、技の一連の動作というか、こういう技があるという資料をいただきましたね。

田中絵コンテみたいに、こういうポーズからこうなってフィニッシュ、というものでしたね。

園村それを頼りに技を取り入れようと思って作りました。このシーンが一番最初に来ると聞いていたので、うんと派手にいきつつ、技もゲーム中のアクションのテイストを上手く紹介できるような、スピード感があるようにしたいなと思いまして。カーアクションの撮り方にちょっと近い感じですね。

田中ええ! そうなんですか。

園村最初に走っているところ、あそこはカーアクションの撮り方を取り入れています。実際、人間同士で戦うと足が止まって、その場で立ち止まってしまうので、大勢のなかをクルマがスラロームしているようなイメージで作ってみようかと。戦っている最中は、幸村の表情をあまり見せずに、動きをメインに見せて、最終的に顔を見せるという感じに持っていこうかと。

田中動きから入っていって、キャラクターを見せると。確かにカーアクションでバトルアクションを撮ろうというのはあんまりない発想というか、僕らではあまり浮かばないところですね。やっぱり園村監督の経験が成せる技ですね。というか、その撮り方については僕も初耳だったので、なるほど! と、感動しています。敵の上に乗ってサーフィンみたいに滑っていくところも目を引きますよね、本当にド派手で。あそこは何回観てもすごいなって思いますね。ゲームの画面だけ見ていると、データで開発しているからあり得ない動きができるんだろうって思われるかもしれませんが、Vコンを観ていただいたら、あれは実際に生身で撮影していたというのが分かるかと。そのスゴさが伝わると思いますね。

園村ゲームのなかの動きってド派手ですから。それに対してムービーの動きは大人しいなって思われちゃうと、プレイヤーのテンションも続かなくなってしまうと思うので。

田中ゲームだとエフェクトなどカメラ効果とかを後で載せられたりもするんですけど、やっぱりお化粧するときの地の顔に当たる、大元の動きが整っていないと見栄えはしないので……。そういう意味では、効果をちょっとつけるだけでもド派手に見えるアクションで撮っていただいたなと思いますね。

園村大勢を相手にできるというのも、ここが一番多いので、一番派手にできるのもココなんだろうなと、力を注いでいます。

田中そうですね、大人数をバッタバッタと斬っていく感じが今回のゲームのイメージにもぴったりですし、それを表してくれているなと思っています。

園村早くゲームをプレイしたくなるような感じになればいいなと思っています。

田中いいデキのイベントシーンなので、いつまでも観ていたくなる人もいるかもしれませんけど(笑)。ワクワクして「よし、この動きをゲームでやりたいな」って思ってくれるかと。

弁丸と梵天丸、運命の対決

田中続いて、弁丸と梵天丸が対決するシーンなんですけど、今回、彼らは大人になったときの幸村、政宗と違う武器というか戦い方になっています。弁丸は槍1本だし、梵天丸も木刀1本なんですが、このふたりの対決で、彼らが大人になったときのスタイル、幸村は二槍で、政宗は六爪に目覚めるという、シリーズにとっても重要なシーンです。子供同士の戦いとはいえ、ものすごい一騎打ちの殺陣で、やり取りの迫力がすごいと思っています。ぶつかり合う迫力みたいなものが出ているなと思いますね。カメラワークもすごいですよね。

園村二槍と六爪の由来というか、こうして誕生したんだというのが印象的に描けないとダメだなと思ったので、記憶に残りやすい形ってなんだろうと思っていたんです。ただ、テンポが落ちちゃうと、“拾います”って感じになっちゃうと思っていまして。

田中よっこいしょ、みたいだとね……(笑)。

園村ここはお互いの気持ちがどんどん高揚していっているので、そういう間って入れづらいじゃないですか。そこで、ふたりが離れ、そこで何かを見つける、そして相手の方をチラっと見るだけですぐに走り出すという、直感的な感じで、ふたりはコレだって思ったんだろうなって。

田中説明的になるよりも、直感的に「今、この相手に勝つにはこれしかない」と瞬間的に閃いたんですね。

園村同じタイミングでふたりとも見つけて、同タイミングで技を完成させるということにしたかったので、タイミングの調整というのが難しかったですね。厳密に言うと若干弁丸のほうが、ちょっと遅れて武器を完成させるんですけど、そこへ梵天丸が突進してきて。刃を交えた瞬間には、戦い方が出来上がっていると。武器を持った時点でその戦い方が直感的に作り上げられたという形になっています。序章もそうですが、このシーンも力を入れて考えたところですね。

田中幸村のシーンは、『幸村伝』としては大事な立ち位置のイベントではあるんですけど、弁丸と梵天丸のシーンは、シリーズ的に重要なところですね。今まで彼らはライバルですよ、と言ってきたけれど、それはなぜなのかというのを初めて描いているはずなので。「こんな戦いをしたら、そりゃライバルになるわ」という形にバッチリ描いていただきました。

園村あと、戦っている楽しさというのがあるように、ガチの殺し合いにならないようにとは考えていました。

田中子供であるというところのスポーツ的な勝負というか、どっちが強いのか決めようぜというような感じが出ていますよね。Vコンでは大人の幸村を演じていただいた、大人の役者さんに演っていただいているんですけども(笑)。でも、ゲームになって弁丸・梵天丸になってもまったく違和感がないので流石だなって思います。

園村刃を交えてからのアクションのコンセプトとしては、アニメと実写の中間のような、2.5次元的なところでした。アニメの作画なら可能な動きというのがありますし、実写もそれを目指そうとするんですけど、どうしてもそこには行きつけないので、カメラワークで3.5次元的なものにしようと、背景を流れるような感じにして、人物も入り組んでいて、ただ対面で足を止めて戦うというのではなく。そういう形で作っていきました。

小道具も欠かせないピース

田中そして、大人になった弁丸・梵天丸が、幸村・政宗として再び大坂の陣で出会って対決するというシーンです。ここでは、それぞれが成長し、あの時生み出した二槍と六爪を操って、戦いのなかで記憶がクロスオーバーする。そして子供の時のシーンを思い出すところです。アクションとしては1対1の殺陣ですが、ここで二槍と六爪の小道具について教えていただこうと思います。政宗の六爪は、実際に刀を3本ずつ持っているのではなくて、セットになっていて、持ち手がついているんですよね?

園村ええ、扇のようになっているんですね。

田中これは自作されたんですか?

園村作りました。特殊な形なので、作らないと無い物ですから。

田中どこにも売っていませんからね(笑)。武器の他にも、政宗のトレードマークの三日月の兜を段ボールを作っていただいたり。

園村その場で、スタントマンの方たちに、僕がドラマを撮っている間に作ってもらったりして(笑)。

田中信玄の斧とかも、段ボールで作って棒につけたりして、即席でやっていましたね。他のシーンでも、昌幸の帽子が飛ぶシーンは釣り糸で吊ったりして(笑)。それから、八章で佐助が出るシーンで猿王手裏剣の取り方がおもしろかったです。段ボールでできた、小っちゃい人型をブンブン独楽みたいに回して(笑)。ちゃんとイメージしやすいように、そういう細かい部分もやっていただきました。幸村役の方は赤いチョッキを着ていただいたり、梵天丸のときは眼帯を布にして、大人になったら本当の眼帯をしてくれたりとか。その辺もこだわっていただきましたね。

佐助の手裏剣

佐助の手裏剣

幸村役は赤いチョッキを着用

幸村役は赤いチョッキを着用

梵天丸では右目を布で覆う

梵天丸では右目を布で覆う

伊達政宗では眼帯に

伊達政宗では眼帯に

園村やっていると楽しくなってきちゃうんです(笑)。

田中そういう風に、パッとやろうというのはゲーム制作の作業ではなかなかできなくて。過去作のものを仮に当てておこうというのはあるんですけど。今ここでサッと、形が見えてくるというのはおもしろいですね。

園村Vコンならではの、このクオリティーでも許される小道具だったりするので(笑)。

田中初めて見る方はもちろんでしょうけど、僕も現場で見てインパクトありましたね。「おお、こうやっているんだ」って。そして、肝心のアクションの部分でこだわられたところも伺いたいのですが。

園村ここは幼少期の延長というか、シチュエーションは違いますけど、あまり色が変わらないようにした方がいいのかなと思っていました。唯一、ふたりが戦うときだけは、どんな辛い状況でも楽しくなれるだろうなって思っていたので、あまりこのシーンは場面が違うから変えようというよりは、幼少期の頃になるべく寄せて考えました。

田中大人になったけれど、子供のときの心が蘇るという、見事な表現でしたね。

第4回:背中で語る男のドラマ

田中ここからは、ドラマ中心のイベントシーンを見ていきたいと思います。今までのシリーズでもストーリーはちゃんとあるんですけども、今回の『幸村伝』のようにひとりのキャラクターをずっと長く追うというのは初めての試みです。また、武将の家系というのもなるべく出さないようにしていたんですけど、今回はキャラクターを深く描くために必要不可欠だったので、幸村の父親と兄を登場させました。家族の関係やドラマも交えて、いつもよりも重厚なストーリーを目指したので、イベントの重要度も上がっていっていたかなと思います。

園村ふだんはドラマシーンに立ち会うことが少ないのですが、僕自身は昔から自主映画を撮っていて、ドラマにも興味はありました。とくに、ドラマがおざなりになるとアクションに対する感情移入もしづらくなってしまうので、なるべく感情、心情メインで撮っていって、それで美味しいところがアクションになるという風に繋げていきました。

田中思い返すと、園村さんが撮影で時間を掛けたのがドラマのセリフや演技のところでしたよね。

園村ドラマのほうをしっかり撮らないとという気持ちはありましたね。

田中1章の一番最初のイベントシーンですが、これはお父さんに試練を言い渡される前の、まだ何も知らなかった頃の弁丸くんが、お父さんに連れられてやって来たというシーンですね。弁丸は初登場ではあるんですが、その父親である昌幸も出るのは初めてなので、今回の『幸村伝』はそういう家族も見せていくよと、このドラマシーンで伝えたいと思っていました。

園村台本を読んだ時点で、テーマは“いろんな人の背中”だったんですね。ですので、昌幸の初登場のシーンは絶対背中から入った方がいいだろうなと。その背中を見ているであろう弁丸目線の背中というところから入っています。前を行く人たちの背中というのが、全編通してのテーマなのかなと、何となく感じたんです。

1章の昌幸の背中

1章の昌幸の背中

田中幸村が最初に見ていた“背中”を、この最初のイベントで表現していただいているんですよね。背中を追っていくというテーマは、ゲームをプレイした方は段々、分かってくると思うんです。最後に繋がっていく大事な要素でもあるんですよね。ですから、園村さんに汲み取っていただいてありがたいです。

園村間違っていなくてよかったです。

田中親父の背中というところからゲームが始まると。最後に繋がっていくテーマが、ここから始まっているわけですね。

兄・信之の曲がり角

田中続いては、武田信玄の後の当主・勝頼を信長に連れ去られてしまい、真田家が助けに行くシーンです。ここでは、逆に昌幸がやられてしまって、そこへ信之が追い付いてくると。そして信長に「勝頼と昌幸の、どちらの命を選ぶんだ」と言われて、信之は父親の方を選ぶわけです。ここは、お話的にも重く、後に彼の心に大きく影響を与えるシーンです。今まで信之は、父親を目標にしてきたんだけれども、信長という新しい強さを目の当たりにして、複雑な想いがいっぱい巡っていると思うんです。長男が当主を守る“侍の道ではない選択”をしたことに対する昌幸の想いであるとか、信長の計り知れない欲望だとかが、Vコンでもよく出ているかなと思っています。

園村今まで、信之自身が目標としてやってきた昌幸とは全く違う背中を見てしまうわけですね。それまで信之は、父親の言うことが全て正しいと思って進んできて、主である勝頼も助けようとしていたと思うんです。しかし、そこで信長という、とてつもない衝撃にぶち当たってしまう。信長の力の大きさを初めて目にして、「今まで自分が信じてきたものは正しかったのか」、「もっと正しいものがあるんじゃないか」と。そんな心情の変化を出すために、一番最初の昌幸の背中を見せています。あれは幸村だけでなく、信之も見ていたはずだと思うんですけど、それと全く違う感じに見えたらいいなと。それが信長の振り向いたときの背中の感じだったんです。それを見た直後から信之は心情が一気に急変するんですね。そして彼が「こっちだった」と気持ちが切り替わるポイントとして描けたらいいなと。

田中これが信之にとっての初めての曲がり角になるんですね。信之は真っ直ぐな男というキャラクターなので、この場面までは本当に真っ直ぐに生きてきたんでしょうけど。やっぱりそこには彼を曲がらせるほどのインパクトが必要です。ここでは、信長が圧倒的に描かれているので、信之の気持ちも分かるような表現になっていますよね。

監督の実体験に基づく、親子の情

田中次は、昌幸と信之の別れの場面です。信長を見た信之のなかに、父親の昌幸とは違う道が見えてきて、最終的には家康のところに行くと。そうして昌幸と信之は別々の道を行く、つまりお兄ちゃんが家を出るシーンです。上田城での第一次上田合戦の場面で、この後、史実上でももう1度合戦があるんですが、そのとき信之は敵の徳川方としてやって来るというところのきっかけになります。ここも、最後の昌幸の背中が印象的だなと思いました。ゲームのデータだけでああいった表現をしようとすると、「背中だけだからユーザーにどう見えるかな」と、ちょっと怖かったりもするんですけど、1回実写で撮っていますから、背中から伝わる気持ちもしっかり表現できるなと。

園村ここは、信之は自分の前しか見つめていないということで、昌幸側には面と向かってはしゃべらないようにしています。

田中彼らは1回も目を合わせていないですよね。

園村信之は、昌幸が言っている言葉自体も受け付けなくなっているだろうなと。僕は、ちょうど次男坊なので、兄貴と父親とのやり取りに何となく重なっていました。父と息子ってそういう時期があるじゃないですか。

田中そうですね。僕は長男なので、こういう風に弟に見られていたのかな……(笑)。園村さんはこの先、迎えるであろう反抗期を、傍で見ていたと。

園村ええ。僕的には幸村目線で(笑)。当時の自分が感じたものも投影できたらなと。それで、信之は一切、昌幸の言葉には耳を傾けず、聞こえてはいるけれど、頭の中には入ってこないんだろうなと思いました。自分が言っていることが正しいと思っている、そういうところを出すために、ずっと目線を真っ直ぐに、前しか見ていないという風に演じてもらいました。昌幸の方は、「お前の言っていることは正論だけど、世の中、そんなに一本調子じゃいかないんだよ」というのを、最後の寂しそうな背中で表現できたらいいなと。

4章の昌幸の背中

4章の昌幸の背中

田中背中が小さく見えてしまう……。あそこは寂しいですよね。

園村でも、昌幸自身は、これは今の信之に言っても伝わらないと分かっているから、それ以上何も言わないという感じかなと。僕なりの解釈ですが。

田中親心、なんですねえ。

園村いろいろ経験してきたが故に、このタイミングでは言わないほうがいいなと。だから演じてくださった島津さんにも、「言いたいことは肚にはあるけど、無理しておちゃらけたテンションにしたほうが、より昌幸の悲しさや悔しさが出るんじゃないか」ということで、そういった演技をしていただきました。

田中園村監督の経験を交えた、リアルな男と男の親子のシーンですね。現実味がありますね。

園村ある時期から、父親より体が大きくなってきたりすると、誰しもそう思う時期が来ると思うので。僕も、もちろん、そういう経験はありましたし。

田中世のお父さんは大変ですよね(笑)。そのおかげなのかもしれませんが、あえて目を見ないとか、背中で語るという演出によって、渋く重厚なイベントに仕上がっているんじゃないかなと思います。

アクションもドラマも新しくなった『幸村伝』

田中園村さん、本日はお付き合いいただきありがとうございました。

園村僕はあまりしゃべりが得意じゃないので、田中さんにはいろいろ助けていただきました。

田中僕も現場では、後でどんな風に仕上がってくるかなというのを楽しみにしながら撮影に参加させていただきました。監督に「今の、どういう気持ちで撮ったんですか?」って毎回聞くこともなかったので、今回、監督が実際にお兄ちゃんとお父さんを見ていたときの話とか、スピード感を出すためにカーアクションのカメラワークを取り入れたというお話を初めて伺えたのでよかったです。より「自信を持って『幸村伝』を作り上げました」と言えるなあと思っています。ありがとうございました。

園村こちらこそありがとうございました。

田中では、8月25日の発売日に向けて、皆さんへメッセージをお願いします。

園村アクションはもちろんなんですけれど、ドラマの部分にも力を入れて、幸村の成長の過程を丁寧に描いたので、ぜひプレイしてみてください。よろしくお願いいたします。

田中今回、ビデオコンテを使ってイベントシーンを作るという新しい試みをしています。イベントシーンだけでなく、ゲームのシステムや、今までの幸村が新アクションになっていたりと、シリーズのファンの方にも楽しんでいただけますし、主人公を幸村ひとりに絞っているところで、今までシリーズは知っていたけど、やっていなかったという方にも、お話が分かりやすくなっているんじゃないかと思っています。ぜひ皆さんにやっていただければと思います。よろしくお願いいたします。

第1回:武将のアクションはこうして作られる

山本『戦国BASARA』シリーズディレクターの山本 真(やまもと まこと)です。よろしくお願いいたします。

古賀インゲームモーションと呼ばれるパートの、モーションキャプチャーのアクションコーディネートを担当させていただきました、活劇座の古賀 亘(こが わたる)です。よろしくお願いいたします。

山本今回の『幸村伝』で、アクションの魅力を中まで全部見せちゃおうかなと思いまして、いつもモーションキャプチャーをやっていただいている“中の人”に出てきていただきました。

古賀こうして皆さんの前に出るのは初めてです。開発の中身の部分というのは、言ってはいけないことも多いもので、表に出ることがなかなかないんですよね。

山本古賀さんとは結構付き合いが古いんですよね。ずっと『BASARA』のあんな動きやこんな動きをやっていただいていて。

古賀もう10年くらいになりますか。『戦国BASARA 2 英雄外伝』からのお付き合いさせていただいていますね。でも、当時はどうして僕に声をかけてくださったのですか?

山本ちょっと昔のことで定かではないんですけど、きっかけは閃きだったと思います(笑)。

古賀とくに僕もモーションキャプチャーのお仕事をしているとは、あんまり言っていなかったので。どうやって見つけ出していただいたのかなと。

山本去年から『BASARA』シリーズ10周年のイベントなどに取り組ませていただいて、改めて振り返る機会もあるのですが、初期のころを思い出すのがなかなか難しいこともありまして。古賀さんとの出会いのきっかけも、その内のひとつです(笑)。

武将のアクションはこうして作られる

山本今回は、『BASARA』のアクション作りのお話です。「こんな風に作っているんだ」と、これからゲームを作っていく人の参考にもなればいいなと思っています。また、キャラクターにも踏み込んで話をできればなと思っています。キャプチャーの収録自体は少し前になりますが、古賀さんも思い出しながらお話をお聞かせください。

古賀じゃあ、言っちゃっていいんですね?

山本もう言っちゃいましょう! そもそも、今回は最初にカプコンでこんなゲームを作ろうかなと思った時点で、古賀さんにご連絡していたんですよね。そのときに「こんなゲームで、キャラクターは6人で、バンバン動くようにしたい」、「今までのシリーズの続きではなく、幸村も新キャラクターです」とお伝えして。それを聞いたときはどう思われました?

古賀「こう来たか」と思いましたね。これまでにいろんな武将が出尽くしているじゃないですか。正直、この先どうなるんだろう、まだ光を浴びていない武将を探して、新たにスポットを当てるのかなと思っていたんですが、まさかキャラクターをリニューアルするとは。それだったら、もう1周できるじゃん、と思いました(笑)。それでこの後50年くらい続くぞと(笑)。

山本今回は、幸村にスポットを当てているので、彼の成長物語でもあるんです。完成された真田幸村、ではなく、そこまでの段階を歩んでいくんだと。それに伊達政宗も、小田原から大坂へと、暴走していく荒々しさを出そうと。通常では刀を一振りでやっていますが、最初から六爪で暴れています。皆さんに、今までとは違う感覚を与えられたらと考えまして。

古賀今までの幸村と政宗はクラシックタイプと言うんでしたっけ、アクションでもそこと被らないライン、成長過程の動きを考えなくてはと。いつもと違って、ただ新しいものを作るだけじゃなかったので、ちょっとハードルが高かったですね。
※今作では、新たにリファインした真田幸村と伊達政宗だけでなく、物語の進行によってシリーズ作と同じ操作の真田幸村と伊達政宗も使用可能になる。

山本さらにそこへ幸村のお父さんとお兄さんが出ます。お父さん・昌幸はトリッキーなタイプ、お兄さん・昌幸はパワータイプになっています。今回はゲームが進行していくほどにキャラクターが変わっていくんですね。思い切ってプレイ感覚も変えたいなと、1ステージのなかに幸村、昌幸、信之がそれぞれ戦っていて、切り替えて遊べるようになっています。ところで、古賀さんは、真田父・兄を見ていかがでしたか?

古賀あれはビックリしましたね。どうアクションを構成していくのかなと(笑)。実は僕、毎回収録が楽しみなんですよ。いち早く『BASARA』の情報を聞けるので。僕自身、実際にゲームもプレイしますし。でもキャラクターの設定を聞くたび、「おお、おもしろいな」と思う反面、「これはまた、難しいぞ」と思います。

山本設定などをお話しつつ、「こんな武器にしたいんだ」とご相談したり、実際にキャプチャーで使う武器を古賀さんにご用意していただくこともありますね。毎回、六爪を作っていただいています。あと、アクターも選出していただいて。

古賀アクター選びが実は一番大事なんです。山本さんのイメージされていること、また僕がそれに乗っけたイメージを体現してくれるのは誰かなと、いつも模索しています。今までよくやってもらっているアクターで、お互いを知っている人は「これは、こういうことですよね」とわかってくれていて。上手くハマってくれますね。逆に、未知の領域のキャラクターなどは「これは、新たに若い子を採用してみようかな」とか。

山本政宗や梵天丸をやってくださった田中大登(たなか ひろと)さんは今回が初めてですよね。

田中大登さん

田中大登さん

古賀そうなんです、彼はあれがキャプチャーデビューなんですよ。

山本荒々しさや、ヤンチャさを出したいと思っていたので、ピッタリでしたよ。

古賀ああー、よかった! 僕も合うなとは思っていたんですけど、山本さんから直でそう言われたら安心しました。あ、でも彼がふだんヤンチャってわけじゃないですから(笑)。彼はまだ若いんですけど、すごく優秀で。今年のジャパンアクションアワードでベストスタントマンとして表彰されたんですよ。

山本すごいですね! アクションの演技って動きだけじゃなくて、立ちポーズでも醸し出す空気というのも大事なんですよね。だから最初に基本動作から撮るとき、彼を見て、「ああ、ピッタリだ、このヤンチャさ、このギラギラ感、合っているなあ」って感じましたよ。

古賀よかった……。アクター選びでそこを外すと、アクターがどんな動きを提供しても、しっくり来ないんですよね。毎回、そこは慎重に選んでいます。

山本今回はキャラクター数も絞っていますが、いつもはもっとたくさんいますから、大変ですよね。

古賀そうですね(笑)。今回は男性キャラクターのみでしたし。

山本女性キャラクターだと、いつも細川桃仁(ほそかわ とに)さんにお世話になっていますね。

細川桃仁さん

細川桃仁さん

モーションキャプチャーは“ライブ”

山本作品の初回の打ち合わせが終わって、まず古賀さんがすることとは?

古賀山本さんのイメージを伺って、僕のなかでもイメージを固めていきます。毎回、打ち合わせでは「このキャラクターはクルクル回転するけれど、どっちのクルクルですか?」と、細かく確認させていただいるんですが、それというのも回転の仕方によっても人選びが変わってくるんですよ。それから、「この人がいいかな」というアクターに声を掛けておくんですね。「スケジュールどうなってる?」と。その後、さらに具体的な動きのプランニングの資料をいただいて、軌道修正しながら最終的にアクターを決めていきます。ですので、動きの詳細が決まるまでは、実はあまり何もできないんですよ。

山本開発のほうでは、古賀さんにイメージは伝えながらも具体的な仕様を練っていきます。企画マンとモーションマンと僕でミーティングしながら、「技のコンボで、こう浮かせた後に空中技が欲しいよね」という風にアクション用の仕様書にまとめていきます。それを詰めながら、いよいよキャプチャーに臨みます。僕は、このキャプチャーがかなりライブ的なものだなと思っているんです。大体、キャプチャーって1日~2日で1キャラクターを撮るという形で、時間も限られていますよね。そのなかで技を成立させていくというのが、すごく緊張しますね。

古賀そうですね。こだわってこだわって、ずーっと考えていると時間がどんどん過ぎてしまいます。時間の制限もありますから、収録当日はみんなで一気にギアをトップに入れ、フル回転させてやっていますよね。

山本収録中は考えていた筋書きがどんどん違ってくるんですよね。いい動きが出ると「これはこっちの技で使おう」とか、逆に「動きが似ちゃったな」と思ったら、違うシルエットにするためにここは変えようとか。

古賀プランニングしていたものはあるんですけどね。ひとつが変わってしまうと、その先はその場で新しく作っていかなきゃいけないですから。でも絞り出すと出るものなんですよね。自分でも考えつかないようなことが、皆さんから意見をお伺いしたり、アドバイスをいただくと出てくるんです。「困ったな」と考えているポーズを、山本さんが「あ、それがいい」っておっしゃってくれたり。技の最後の決めを先に決定して、そこに行きつくためには剣をどう振ればいいかと考えたり。皆さんが導いてくださるので、いい意味で自分のブレーキが外れるのかなと。

山本通常技のほかに、名前が付く固有技ってありますよね。特別な技だという想いがあるからか、名前が付くことに対するプレッシャーがあるものなんです。ですので、名前がつくに値するケレン味をどう出していこうかと、古賀さんと相談しています。
※BASARAシリーズでは□ボタンの連打で出す技を通常技、他のボタンの組み合わせで出す技を固有技と呼ぶ。

古賀この作品はケレン味がすごく大事で、かなりカッコつけちゃってますよね(笑)。だから普通にアクションをやるだけじゃなく、アクションを崩していくんです。かっこよく崩していった結果、すごいポーズが生まれたりして。普通のアクションシーンや殺陣のセオリーでは、崩すことはNGだったりするんです。ですから、『BASARA』で思いっきり崩せるのは楽しいですね。

山本そう言っていただけると。ホッとしています。いつも無茶を言っているので……(笑)。

第2回:幸村は、熱くなければならない

幸村は、熱くなければならない

山本今回メインの武将である幸村なんですが、彼もこれまでのシリーズがあるから大変でしたよね。

古賀そうですね。幸村は槍を2本持っているんですけど、実際に動く側にとっては、長い物を2本持つと、カチカチ当たってやりにくいんですよね。一般的なアクションシーンでは基本、僕たちはやらないことなんです。だから、今までそのスタイルはなかったんですけど、それを敢えてやったからこういう新しいものができたんだなと感心しました。

山本政宗も刀を6本持っていますしね(笑)。

古賀それを使いこなすことで、新しいものが生まれていくんだと思います。自分たち体を動かす人間からすると、どちらかと言うとやりやすい方へと逃げていきがちなんです。でも、『BASARA』はそんなブレーキを外してくださるので、僕のアクションに対する考え方もすごく柔軟になっていっています。その積み重ねが僕のスタイルになっていますね。

山本収録でも、実際に槍を持つこともあれば、木刀で1回動きをつけてから、何も持たないでやることもありますよね。ここは勢い重視だから、敢えて何も持たないでやろうとか。実際にゲームを作るときには、何か持っていないとわからないので、制作用にガイドとして動画を押さえてもらったりとかもしましたね。最初に撮るのは、通常の動作や立ち振る舞いですが、幸村は“若さ溢れる”という部分もあるのでいつもはドーンと立っているんですけど、今回は勢いを出すために、前傾ポーズからお願いしていましたね。

古賀幸村を演じるうえでは、熱くないといけませんよね(笑)。それに今回はクラシックタイプとの差も考えなければならないので、アクターを選ぶときに迷いましたね。今までのシリーズでは、ムービーの部分では僕が幸村を演らせていただくことが多かったので、個人的な思い入れもあったんです。ですから、つぎにバトンタッチという意味も込めて、杉原 明(すぎはら あきら)くんというアクターを選出しました。彼は僕より熱いですし(笑)。

杉原明さん

杉原明さん

山本収録中は、めっちゃ声が出てましたよね!

古賀いいアクターは、声が出るものなんです。出せと言わなくても、漏れるように声が出るんですよ。

山本キャプチャースタジオの熱気が、見ているスタッフも含めて上がっていった感じでした。

古賀みんなの心を掴むために大切なことなんですが、通常動作をするだけでも合う人がやらないと、みんなが首をかしげちゃうんですよね。とくに、一番最初に撮るのが待機ポーズ。これって実はよく目にするものですよね。けっこうハードルが高いんですよ。そこで、キャラクターから出てくる匂いというか、オーラ、色が見えてくるので。動きは地味なんですけど、プレッシャーもあり、やることも実はいっぱいあるんです。止まっていると静止画になっちゃうから動かなければならない、そこでブレスをする。人間って呼吸をしてもそんなに動かないですよね。それをちょっと誇張して動かしてやる。それだとシルエットがあまり変わらないので、そこに少しツイストを加えたり、持っている武器を微妙に揺らしたりとか、いろんなテクニックが入っているのが、1発目に来るんです。だからすごく緊張するんですよ。

山本すべての攻撃が終わったら待機ポーズに戻るわけですし、その戻り方もいろいろあるんですよね。

古賀よく現場で言うんですけど、ここはもうちょっと派手にするときのために、“おかず”足しましょうかと。

山本よく聞いた言葉ですね(笑)。いざ、その待機ポーズから通常攻撃に移るわけですが、大事にしているのがタンタンタン、というようなテンポ感なんですね。今回、幸村は飛び跳ねる攻撃もあるので、ちょっと崩してみたいと思いまして。タンタンタンと、「3、3、2」みたいな形にできればいいなと。その3のキーワードで、飛ぶことができるような形になればなと。

古賀皆さん、これがどういうことかわかりますでしょうか? このリクエストに応じていくのが僕の仕事なんですけど(笑)。アクションを説明しようとすると、どうしてもタンタンタン、みたいな擬音ばっかりになるんですよ。「ビュビュン、バッ! じゃなくて、ビュビュン、バン!!」だとか(笑)。

山本そうなっちゃいますよね(笑)。幸村は、今までのクラシックタイプでは広く開いた横薙ぎの攻撃が多かったんですけど、今回は突きを出したいなと。初手から突き、突きなんですね。突きなんだけど、1段目は気持ちいい攻撃にしたいと速さを求めたりとか。

真田幸村の通常技/突き 初期資料より抜粋

真田幸村の通常技/突き 初期資料より抜粋

古賀レスポンスのよさ、ストレスのない動きですよね。でも、言ってしまえば突きって、突くだけなんですよ。斬るのも斬るだけなんです。動作としての目的はすぐ消化できてしまうのですが、その動きにバリエーションを持たせて、リズムを変えていかなければならないというのは難しいですね。

山本さらに、固有技や固有奥義もありますから。けっこう無茶苦茶なお願いをしていて、いつもすみません。

古賀いやあ、鍛えられますよ(笑)。

山本あと、キャラクターのバトルコンセプトというところの特徴付けで、「今回の幸村は敵から敵へ飛び跳ねたいんだ、また技がそこへ繋がるんだ」とお話をさせていただきましたが、こちらも大変だったのではないでしょうか。

真田幸村のバトルコンセプト アクション資料より抜粋

真田幸村のバトルコンセプト アクション資料より抜粋

古賀まず、人間は飛べないですからね(笑)。じゃあどう撮影していくかということなんですけど、編集作業のプロセスなどもお伺いしながら、出来る範囲のことを現場でやっていきましたね。皆さんのご意見をいただいて、ここは実際は足がついているけれど下半身は空中だという体で、上半身の演技をメインにやりましょうとか。各部署がいろいろ力を合わせています。アクターが動くのは、あくまで下書きであって、それを皆さんがブラッシュアップしていただいて、かっこよくなっていくので。

山本ひとつのアクションのなかで、何分割もして撮ることもありますよね。

古賀「この飛び出しだけを使います」とか。

山本「ここの着地だけを使うので、回転した着地だけをください」とかね。

古賀演じるほうとしては、具体的に使いどころを絞っていただくとすごくやりやすいんですよ。

山本キャプチャースタジオでは、アクターさんによく跳んでもらっているので、天井にぶつかったりとかもしますよね。

古賀ぶつかることがもう前提で、蛍光灯とかも抜いてあります(笑)。

山本慣れたものですね(笑)。それから吊ったりとかもありますね。みんなで持ち上げたり。

古賀モーションキャプチャーのマーカーを着けている人間しかデータとして収録されないので、着けていない人がマーカーを着けた人を持ち上げると、その人がフッと浮いたようになるんです。そういったテクニックを利用して、変わった起き上がり方など、新しいことができるんですよね。これは実写ではなかなかできないことです。

山本そうですね。スタジオで撮ったものをすぐに、ゲームのキャラクターモデルに反映できますし。

古賀あれはイメージが掴みやすくていいですね。

山本アクターさんの動きを幸村の体型に合わせてみたときに、「もうちょっと腰を落としてください」とか、反映したモデルにぴったりになるようにお願いをしたり。そんな感じで、杉原さんを酷使してしまいました。

古賀こうして一連で撮ったものを見ると、いろいろやっていますね。

山本幸村の撮影は10時間以上に及びましたね。

古賀ずっと朝から叫び続けていましたね(笑)。今ちょうど、固有奥義を失敗したときの映像が出ていますが、これも何気に見ると気がつきませんが、実はアクターとしては守らなければいけないことをたくさん実行しているんです。ひとつは“軸”です。現場でもよく軸を気にしているんですが、演技を始めたときと、終わったとき、なるべく同じ直線状にいるようにしなければならないと。これも自由に動いているようで、そこをちゃんと守っているんですね。そこを気づかせないで自然に動くのもテクニックがいるんです。

山本それがなかったら、斬ったら右にズレていたりすることになったりしますもんね。
あと、今回のバサラ技は派手にしたいなということで、ドーンと飛んで、空中にいる状態で突きを連続で放ち、地面に六文銭を描いています。最後は1作目のような懐かしい勝利ポーズのような雄たけびをあげています。
※BASARAシリーズで○ボタンを押したときに出す技をバサラ技と呼ぶ

古賀ここは敢えてクラシックタイプと被せていきましたよね。

山本クラシックタイプとはいえ、やはり幸村は幸村なので。どこで一致させるのかというのもお話をしながら作っていきましたね。

古賀まったく新しいニュータイプにはせず、昔とどこかでリンクさせようと。そうしないとまったくの別のキャラクターになってしまいますから。

山本そうなんですよね。だからハズせない烈火もやりましたね。幸村は、本当に語ることが多いキャラクターですね。

古賀やりがいもあります。もちろん、これまでのクラシックタイプでもぜひ遊んでくださるとうれしいです。

山本今回はシリーズ総勢46武将が参戦していて、古賀さんが今まで撮ったキャラクターも全部使えるようにしてあります。

古賀おお!

山本かなり贅沢なプレイアブルキャラクターの数だと思います。

古賀本当に総集編ですね。お得です。

真田幸村/伊達政宗のアクション動画はコチラ

第3回:政宗の六爪は四代目!?

政宗の六爪は四代目!?

山本続いては、伊達政宗についてですが、政宗といえばやっぱり六爪ですよね。古賀さん、ほかの現場で六爪みたいなの持つことってあります?

古賀ないですよ(笑)。六爪持っているのは政宗しかいませんから(笑)。僕、このあいだ事務所の引っ越しのときに、撮影で使ったおもちゃの六爪を置いていたら業者さんが「おっ!」って反応していましたよ。もう六爪イコール政宗ですからね。

山本六爪のキャプチャーモデルも何代かありますよね。

古賀もう四代目くらいでしょうか。撮影のときに小道具を作って持っていくんですけど、どんどん壊れていったり、丈夫に軽量化したりするので。アクターは武器を1日に1000回以上は振ると思うんですけど、時には無理なポーズで止まったりするので軽くなければいけないんです。あと、僕的には安く仕上げなければならないと(笑)。今ではかなりクオリティーの高いものを作れるようになりました。小道具は、僕と今回幸村のアクターをした杉原くんと作っているんですけど、このデキのいい六爪は杉原くん作だと思います。

山本小道具も実際にあるとないとでは、全然違いますよね。見ているほうも、どういう動きか想像がしやすいです。

古賀おっしゃる通りです。今回の撮影でも、小道具があったからこそ「あ、これカッコイイ」と気づいたポーズがありました。とくに、政宗のガードのポーズは小道具なしでは気づけなかったなと思います。シルエットもそうなんですけど、小道具を振ったことによってフォン、フォンと空を切る音とか、いろんなものを感じるんです。そういうところから、政宗のリズムというのができてきたり。ですから、この小道具は欠かせないんですね。1個400円くらいですけど(笑)。

山本そうなんですか(笑)。ところで、今回の政宗はけっこうヤンチャな感じじゃないですか。ヤンチャさを出しながら技として成立させること、そして今回の六爪の斬り方には8連撃+Mad Driveという暴走モードがあります。これらも大変だったんじゃないかと思うのですが。

古賀ネタ自体もそうですけど、アクターの身体能力としても高いレベルが求められましたね……。だから田中大登くんにお願いしてよかったです。山本さんにピッタリだと言っていただけて。

山本ピッタリと言えば、島 左近のときの神戸さんもよかったですねえ。あのときは、「ヒネりたい」とお願いして。

神戸豊さん

神戸豊さん

古賀毎回、キャラクターごとにそういうテーマがあるんですよね。利休のときは、舞うようにとか。

山本ええ、斬るというよりダンサブルにいきたいと。

古賀利休は、僕の後輩に元スタントマンのダンサーがいるので、彼に頼みました。

山本あのときもおもしろい収録でしたね(笑)。……話を政宗に戻しますが、収録で思い出深いことってありますか?

古賀彼はメインのキャラクターなので、皆さんの期待も大きいですよね。それに応えなきゃというプレッシャーがすごかったですね。もちろん幸村もですけど。

山本政宗は、死亡モーションもいいですよね。バーンとやられても、それでも刀1本持って向かっていくぞというポーズで死ぬんです。政宗だからこその演技ですよね。

古賀アクションの動きもやはり、全部演技なんですよね。先ほどの斬るという単なる動作に、キャラクターらしさや魂を入れていくのがアクターの作業なんです。

山本なるほど。そういえば、僕が印象深かったのが、小十郎の血を拭うアイデアを出していただいたことです。

古賀あれは僕が温めていたアイデアだったんです。

山本デモシーンはアクションとは別のアクターさんをお願いしていたんですが、古賀さんにはこのキャラクターであればどうするのか、あとは武士の振る舞いかたについてもアイデアをいただいていました。

古賀刀のしまい方とか、ほかにも細かいテクニックを提案させていただきました。でもマニアックなもので、ほかの現場ですとあまり採用されないですけれどね。山本さんはけっこう拾ってくださるので、僕も惜しみなく引き出しを開けられます。

山本やっぱり所作って大事ですよね。あと、舞台からも逆輸入したものもありましたね。

古賀三成のアレもかっこよかったですよね。「やられたー!」と、悔しかったですけど、かっこよかったですね。

山本貪欲にいいものは取り入れていきたいですね。

古賀先ほどの死亡モーションもそうですけど、僕が政宗らしいと思ったのが前回避です。回避なのにあんまり避けてないというか、向かっていくようで(笑)。普通なら、「これは回避じゃないよ」と不採用なんですけど、山本さんには採用してもらえるので(笑)。

山本政宗は陣羽織を着ているので、クルっと回るのもそれをなびかせるイメージもあって。着ている衣装によってもアクションが変わってきますよね。

古賀松永もそうでしたね。マントっぽい衣装を渋く動かそうと。

山本そうでしたね。それから、政宗のバサラ技も、今回思い切りましたよね。ゲーム全体的に、バンバン前に出て暴れる技が多いので、バサラ技は敢えて足を止めて。龍を飛ばすエフェクトも派手ですよ。龍が政宗に向かってきて彼を食らうんですね。そこでは衣装の背中の十字架のデザインもよく映えるんです。この十字架は史実に基づいたネタですね。
※伊達政宗は小田原城攻めへの遅参および葛西・大崎一揆の申し開きのため豊臣秀吉が待つ聚楽第(じゅらくだい)へ死に装束である白装束をまとい、金箔が塗られた十字架を背に上洛したとされる。

古賀僕、『BASARA』ですごくおもしろいなと思うのが、史実からいろんなことを取り入れていることなんです。僕みたいなあまり歴史を知らない人間が見ると、虚構の世界にしか見えなくて。でも、お話を聞くと、その中に実があるんですよね。虚の中に実がある、実の中に虚があるというような展開がすごくおもしろいんです。利休のときも、二面性があるのが表裏、詫び寂びであったりを表していて。こういう話、すごく好きなので、現場でいつも聞いちゃいますね。

真田幸村/伊達政宗のアクション動画はコチラ

パワフルお兄ちゃん・信之の秘密

山本さて、お次は兄の信之ですが、どうですか、この見た目。

古賀僕は仕事柄、武器が最初に気になるんですが、「何だコレ?」と思いました。

真田信之の武器「はしご槍」

真田信之の武器「はしご槍」

山本一応、はしご槍という名前がついています。史実というか、真田家にはハシゴのモチーフを使った甲冑もあるんだそうで。お父さん昌幸の背中にも描いてあるんですけど。ぜひ、このハシゴというキーワードを使いたいなと思って。昌幸は短い槍なんですが、信之も槍にしたいなと思って、はしご槍としました。

古賀完全にオリジナルの武器ですよね。ハシゴで引っ掛けたり、上ったりすると。そういえば、彼の髪型もすごいですね。

山本彼は“信濃の獅子”とも呼ばれていたらしいんです。ですので、獅子をイメージした髪型になっています。また、ドラマパートのなかでも語られるのですが、信之は真田家でありながら、のちに幸村たちとの別れがあったりするんです。そこから“ふたつの人生”みたいなイメージもあるなと思いまして、チョンマゲじゃないですけど、毛束をふたつにして。
※史実では真田信之は昌幸、幸村と別れて関ヶ原の戦いで東軍として上田城攻めを命じられる。その後昌幸、幸村の死後の幕藩体制下において上田藩、松代藩藩主となる。

古賀それは初めて聞きました。おもしろいですね。

山本もうひとつ込めた意味もあって。プレイヤーキャラクターにもなれば、敵対することもあるので、そういうときの大きなシルエットを作りたいという思いもありました。ただ、ゲームモーション担当はシルエットにかなり苦労したようです。

古賀僕からしても、武器が干渉しないかとか考えてしまいます。

山本チームにはゴメンねと思いながらも、いろいろ工夫してもらいました。動きでも、パワータイプならではの苦しみというのもありますよね。今回も、パワータイプのモーションをよくお願いする和田さんに演じていただきましたが……。

和田 圭市さん

和田 圭市さん

古賀和田さんは数々のパワフルなキャラクターを担当していただいています。アクターは系統の近いタイプのキャラクターを担当させていただくと、どんどん攻める部分が少なくなってくるものなんですよ。和田さんも信之らしさを出すために苦労されたと思います。それにしても、信之はパワータイプにしては、動きがアクロバティックですよね。

山本前転宙返りをしたり、よじ登ったりとか。

古賀パワータイプのキャラクターなので、手をついて回る動きにしても、身軽な人がやるアクロバティックとはまた違うんですよね。迫力はあるんですけど、身軽という(笑)。

山本ドーン! っていう効果音がつくくらいの迫力なんですよね。キャプチャーでもそういうところを求めていきましたね。でも、通常アクションにも、パワータイプならではの悩みはつきまといますよね。いきなり大振りの攻撃だと当たらないですし……。

古賀まず初めはコンパクトな動きですよね。

山本ただし、パワーを感じさせる動きでなくてはならないと。一方で、大技でも予備動作のなかで周囲に当たり判定があるようにしたり。

古賀ヒットしてしまうような予備動作ということで作ったアクションでしたね。

山本そんな予備動作や武器を含め、信之のアクションはいかがでしたか?

古賀僕は好きなんですけど、演じるほうは難しいですよね。動きがトリッキーになってきて。そうすると僕がよくやってしまうような、動かし方に……。僕の動きの特徴は、モーションエンドに前後の繋がりを持たせて、螺旋の動きにしたりすることが多いですね。それを“古賀節”なんて言われたりもします。信之はとくにそういう部分が要所要所に出ていますね。

山本古賀節を入れながら、他のキャラクターと似ないようにしながら何百通りの動きを作っていただいて……。

古賀でも、僕としても収録の帰り道なんかで「あれ、似てたかもな」と思うこともあるんです。翌日、山本さんに「こういう手の動きって他のキャラクターでもありませんでしたか?」って聞くと、「武器が違うから印象も違いますよ」とおっしゃっていただいて。それでホッとしたり(笑)。

山本そんなこともありましたね。ところで信之は、細かいところを見ていただくと“肉弾”っぽい動きをしているんですよね。武器を殴って打ち上げたり。

古賀その勢いで反転させて叩きつけたり。武器を駆け上ったりして相手を投げるというのもありましたね。

山本ニーキックだけど、1回武器に乗っていったりとか。

古賀信之の武器の使い方だと、相手のリアクションもついて完成となるところがありますね。僕もまだそこは見ていないので、楽しみです。

山本彼の技には相手を引っ掛けて投げるという特徴がありまして、投げられて真っ直ぐ飛ぶものもあれば、バウンドするものもある。おもしろいアクションになっています。
※信之のつかみは固有技によって投げ方が変化する。

古賀飛んで行ったものが干渉して、またリアクションが返ってきたりするんですよね?

山本ええ。バックスピンして戻ってくるものもありますよ。それを蹴り上げようなんて案も出て、いま企画マンが詰めているところです。

古賀あれはどうなったんですか? バシバシ叩きつける動きは。

山本周囲にも影響がある技になっていますよ。もう、暴れたら手の付けられないキャラクターになってきています。

古賀信之はパワフルだけどアクロバティックで、スピード感もあるし、使いやすそうなキャラクターですね。

山本使いやすいですよ。プレイヤーキャラクターですので、パワータイプだけど使いやすさは重視しました。それでも、ちょっとクセは付けていますけどね。あと、バサラ技では、崖を上って叫びます。

古賀叫ぶと敵はどうなるんですか?

山本その前にもう、目の前に岩が出現しただけで大変なことになっています(笑)。獅子なので、あの某ミュージカルのイメージもありつつ……。収録現場では、実際にどう崖に上がろうかというところは悩みましたけど

古賀大道具の箱や、荷運びのカートまで、スタジオにあるありとあらゆるものを引っ張り出して崖を作りましたね。

山本終わったときはみんな汗だくでしたね。でも、おもしろかったです。信之を操作するときは、ぜひ彼のパワーを感じていただきたいですね。

真田昌幸/伊達信之のアクション動画はコチラ

パパはいつ何時もダンディーでオシャレ

山本さて、今度はお父さんの昌幸についてですね。幸村を作ろうとなったときに、お父さんとお兄さんを出したいなと思いまして。このお父さんは史実としても、まぁー、食わせモノで。

古賀食わせモノと言うと……。

山本戦術的にも優れていたし、人を食ったような性格だったと言われていますね。それを受けて、『BASARA』ではどうしようかとなったときに、マジシャンという形がいいんじゃないだろうかということで、奇術師となりました。ただそれでも、プラスαとしてダンディーなお父さんにしたいなと思いまして。キャプチャーでもダンディーさと、オシャレさを出していただきました。通常攻撃でも、攻撃に見えないというお願いをして……(笑)。
※真田昌幸は徳川、後北条、上杉、武田の強力な戦国大名に囲まれながらも侵攻を防ぎ真田家の独立を保ったため「表裏比興の者」と評されている。

古賀攻撃しているように見えないような攻撃、と(笑)。いただいた資料にはフラメンコのポーズとか、闘牛士のポーズというのもありましたね。そしてマジシャンで、掴みどころがない人なんだとも。周囲はいつも昌幸にはぐらかされているようなところがあるんですよね。そのエッセンスをいろんなところに入れていくのが楽しくもあり、高いハードルでもありました。

山本お父さんは攻撃もオシャレですし、戻り方もオシャレなんですよね。川名さんがオシャレにやっていただいて。

古賀そうなんです。僕の先輩アクターの川名 求己(かわな もとき)さんにやってもらったんですが、上手いんですよね。今まで『BASARA』シリーズでも、個性派キャラクターを担当してもらっていて。

川名 求己さん

川名 求己さん

山本又兵衛とか(笑)。謙信もそうですね。カッコイイキャラクターもいけるという。

古賀器用なので、自分たちが考えたものにプラスαをくっつけてきてくれるんです。通常ポーズに戻るときに、そういう動きが挟み込まれていたり。よりキャラクターが立ってきますよね。ですので彼に担当してもらってよかったなと思っています。山本さんとしてはいかがでしたか?

山本ええ、よかったです! ダンディーさをすごく出してもらいました。帽子の使い方もそうですね。

古賀帽子も昌幸の大事なキーワードですね。

山本あらゆる場面で帽子を押さえながら動いていますね。でも、これだけのボリュームだと、帽子押さえながらでもシルエットが似ちゃったりして。通常攻撃も意外と苦労しましたね。

古賀先にやったアクションほど忘れがちになるので、写真を撮ったり、ホワイトボードに描いていって「これとは違うポーズにしていこう」と進めていきました。「最終的なポーズありきでこういう動きをしてみよう」という作り方もしてみたり。

山本印象深いのが、攻撃の1段目はパッと速く切るんですけど、2段目でおじぎをしたりとか。それと、死にモーションも印象深かったですね。

古賀もう普通には死ねませんね(笑)。今回、川名の死にモーションのキレがイイんですよね。ベテランの斬られ役のリズム感なんです。もちろん敢えてやっているのですが、それがおもしろくて(笑)。

山本最期もオシャレに死ぬという。あと、もうひとつ印象深いのが、ガードです。見えない壁を作っちゃうんですよね(笑)。

古賀ゲームでは壁ができるんですか? 

山本できます(笑)。パントマイムをやってみようと。

古賀マジシャンでありながら、どこか大道芸のパントマイムを入れていこうと作りましたね。

山本バサラ技では、キャプチャーの収録ですがセリフを言いながら演技をしてもらいました。後ろには信玄像が出てきて暴れるんですよね(笑)。

古賀信玄像とリンクして動くところもあって。

山本実は信玄像もキャプチャー撮っていますからね。それから固有奥義では、布を出して兵士を作って、闘牛士のようなポーズを取って。

古賀ここはかなり苦労しましたね。攻撃らしいポーズができないので……。

山本でも、「こんな動き、あんな動き」とその場でポーズを取りながら試行錯誤して。これこそライブ感だなと思いました。そうやって作り上げたダンディーでオシャレなお父さんをぜひ体験していただきたいですね。バサラ技のときのセリフも聴きどころです。

真田昌幸/伊達信之のアクション動画はコチラ

一本槍の弁丸の未来は……?

山本お次は、弁丸です。

古賀弁丸はかわいらしいですよね。

山本声は保志 総一朗さんに演っていただきました。もう若い声で、ハキハキ、ハツラツとしていました。

古賀ええー! じゃあ、クラシックタイプからすべてのお声を?

山本全部、保志さんが担当されています。変わっているところで言うと、まず、扱う武器が1本ですので……。

古賀やりやすかったですね(笑)。

山本設定としては、まだ二槍にはなっていないんです。二槍になるきっかけがあるんですけど、そこもドラマパートに盛り込んでいます。ということで、プレイヤーさんは1本槍をがんばって練習している弁丸が使えます。

古賀でも、いずれ2本の槍を持つような素質みたいなものを入れていきたいなと思ったんですよね。

山本そうなんです。やっぱり幸村らしさがありますよね。技にも烈火や紅蓮脚があったり。彼は、梵天丸とは対照的で真面目なんですよね。なので、真面目さを演技のなかで出してもらったり。それと、幼さを出すのには苦労されたんではないでしょうか。

古賀ええ、動きのひとつひとつ、走って止まるときなど、それっぽく見せるためにはどうすればいいかと考えました。どのキャラクターもそうですけど、走りとか歩きはよく目にする動きなので、ポージングはこだわりますよね。肘を張り出したりとかね。止まり方もみんな違うんですよね。

山本そうですね。あとは弁丸にも特徴的な“天羽”という敵から敵へと跳ねるアクションがあるんです。幼いながら、彼もできるんですね。幸村と同じ苦労をここでもしましたけど(笑)。それから、幸村らしさといえば、バサラ技です。昔の幸村のバサラ技をなぞって幼さを出そうかなと。

古賀まだ磨かれきっていない、雑な部分があるんですよね。

山本そこなんです。そういえば、収録中にすごいなって思ったことがあって。キャプチャースタジオには、確認用にゲーム機を持っていっているんですけど、それを見る前に、古賀さんに「幸村のバサラ技の動きってどうでしたっけ?」って言ったら、古賀さん、普通にやってのけて。覚えてるんだーって。

古賀あははは、そうでしたっけ(笑)。

山本そこから、このバサラ技を一槍でなぞった形ができないかと作ったわけです。ユーザーさんは、プレイされたらぜひ、この弁丸が『幸村伝』の幸村になるのか、『皇』の幸村になるのかと、思いを巡らせていただくとおもしろいのではと思います。

ヤンチャな梵天丸の中の人は……?

山本続きましては、梵天丸です。彼は政宗の収録が終わってからでしたね。梵天丸の武器は二爪でもなく六爪でもなく、木刀なんですよ。

古賀木刀のほうがよりヤンチャっぽさが出ますよね。

山本設定としては、まだ小十郎に鍛えられているところなんですよ。バサラ技だけ、小十郎から習っていると。それ以外は、型もなにもない、野獣のような悪ガキで(笑)。

古賀雑に蹴っ飛ばしたりしますもんね(笑)。

山本そして政宗の若いころでもあるということで、Mad Drive系の暴走モードっぽい回転があったりします。

古賀僕も見ていて、子どもなんだけど、動きに爆発力があるなと感じました。この梵天丸のアクターは田中くんでしたが、彼の爆発力のある動きがピッタリでしたね。

山本最初は、コワい人なのかなと思っていたんですけど、すごく真面目な方で……。

古賀この動画だけ観ると、すごく生意気な子に見えちゃうんですけど、カットかかった瞬間、「ハイ! ハイッ!」って言う好青年なので(笑)。

山本そういえば、動きすぎてご飯が食べられなかったですもんね。朝から収録だったんですけど、お昼休憩でご飯食べているときに、彼ひとりが食べられなくて、何だか申し訳ない気持ちでした。でもそうしてヤンチャに演じていただいた梵天丸が、あの政宗になったのは納得できるなと思いましたね。政宗はシリーズを重ねてもまだまだヤンチャなんですけど、いろんなドラマがあって、考える場面もありました。でも今回の『幸村伝』では、思いっきりヤンチャさを出したいなと思って、梵天丸も“ギラギラ”をテーマにしています。

古賀動きにも生意気な感じを出そうというのは、意識したところでした。彼はかなり暴れん坊ですよ。アクロバティックな動きも入っていますからね。

山本ちょうどこのアクロバティックな回転が、三又のマフラーの動きにも合うかなと。このマフラーは回転のためのデザインですね。最初は二又でどうだという話もあったんですけど、「いや、政宗なら3か6でしょ」ということで、キャラクターデザイナーに1本足してもらいました。

古賀そうだったんですか!

山本もうキャプチャーするころには、三又になっていたかと。

古賀収録自体は1年以上前になるんでしたっけ。

山本そうですね。それからずっとキャプチャー動画を観ながらウチのスタッフががんばって作っていきました。

古賀やっぱり、編集していくのは大変ですよね。

山本そうですね、ゲーム的なカスタマイズを施すこともありますし、そこから気持ちいいテンポにしていったりもします。こういった作業のリレーがおもしろいですよね。モーションを作る人がいて、効果をつける人がいて、SEつける人がいて。そして、企画は、「これとこれのアクションが繋がると気持ちがいいな」と、キャンセルのポイントを決めたりとか。

古賀自分たちは、現場でパフォーマンスをしたら後は、カッコよくしてくださいとお任せするだけなので。山本さんたちはその後のご苦労がたくさんあるんだろうなと思うんですけど。

山本もう戦場ですね(笑)。でも、演じていただいた熱をそのまま持って作っています。キャプチャーでの温度というのは、未だに生きていますよ。

古賀うれしいですね。収録が終わった後も「早くデータを触るのが楽しみです」とおっしゃっていただけると、すごくうれしいんですよね。

山本僕としても、収録はもちろんですが、今回このような対談させていただく機会が持てて、すごくうれしいです。

古賀今回が初めてでしたね。オフィシャルでお話できるというのが。皆さんに、こういう仕事をしている人がいるんだということに気づいていただけたら、うれしいですね。

山本僕は今回、シリーズディレクターという立場で、キャプチャーとアクションを見ていたのですが、そこからゲームのほうに落とし込む部分は田中ディレクターにバトンタッチしていっています。キャラクターの部分は今までの『BASARA』ではありますが、そこにまた新しい風が吹いていけばいいかなと思って作っています。いろいろ初めての取り組みもしていますので、どうなるか期待していただければなと思っています。では、古賀さんから最後にメッセージをお願いします。

古賀インゲームモーションのなかでも、実際に演者が魂を込めてパフォーマンスしていますので、そういった部分も感じながらぜひプレイしていただければと思っています。よろしくお願いいたします。

山本今日、古賀さんとのお話を通じて、ふだんはなかなか見せない部分をお見せできたかと思います。これが『戦国BASARA』を知ってもらう機会になればと思っています。今回お話したように、キャラクター制作に携わる人はすごく多いんですね。そんな、いろんな方のパワーを注入してできあがった作品が『戦国BASARA』です。『幸村伝』もみんなのパワーを集結していますので、ぜひ手に取っていただければと思います。今後とも『戦国BASARA』の応援、よろしくお願いいたします!

弁丸/梵天丸のアクション動画はコチラ

After Talk

10周年を迎えた戦国BASARAでアクションシーンについて初めて語ってもらったお二人。収録終了後も話は止まらず、特別編After Talkとしてお話を掲載させていただきます。ここには載せられないような話もたくさんありましたが、熱い魂を持った武士(もののふ)としてモーションキャプチャーの歴史やこだわりの想いを存分に語ってもらいました。

古賀僕がキャプチャーを始めたときは、磁気式だったんですよ。あれは体力も使うし、動くのが危険だったのでどうしても、スタントマンに近いアクションが得意な人がメインでやっていたんですけど、今は光学式で子供でも女の子でもできるから、すごく敷居が低くなりましたね。僕たちは、それくらい古くからやっていますけど、時代によって求められる演技というのが変わっていて。PS2の時代は、表情も動かないし、髪も動かないんですが、じゃあそれをどこで表現するかとなると、身振り手振りの大きさだったりするんです。それが段々と表情がついたり指や髪も動くようになると、そういうお芝居が不自然になってくるんです。浮いて見えちゃうというか。

山本確かに、細かな動きでも表現できるようになりましたよね。

古賀でも、逆にスマホのゲームとかだと、PS2時代のお芝居が必要なんですね。そういうときに僕たちが培ってきた経験が活かせるんです。作品によって、プラットフォームに合わせて変えていけるアクターは少ないですけれど。先ほどのインゲームアクションの話って、ヒーローものにも当てはまるんですよ。昔のヒーローたちの動きは仰々しかったですけど、最近ではすごくナチュラルですよね。昔みたいな、物を面で捉えるような芝居はしなくなっていて。でも、芝居でもキャプチャーの世界でも、いろんな経験を積まないとできない表現の域というのがあるんです。ただ、そこまで達する人がなかなか育たない現状があります。

――以前よりも求められる演技の難度も上がっているでしょうし……。

古賀そうなんです。難しくなるし、そもそも光を浴びない仕事なので、憧れないというか……。好きな人は食いついてくださるのですが(笑)。

――求められるものも多岐に渡りますよね。体術だったりファンタジーなお芝居だったり。でも、体を動かすことが好きで、何か経験を持っている人にはぜひ進んでいただきたいジャンルですよね。

古賀ええ。これから目指す人ももちろんですが、今、さまざまな分野で現役でやられている方の表現の場としても広がればいいなと思っています。武道などでプロにならなかった方でも、そのスキルを活かせたらと。

――ゲーム開発側としては、そういった方々の経験があればよりいいものが作れますよね。ぜひキャプチャーのことを知っていただきたいですね。

山本お芝居の方面もそうですよね。動けるだけじゃなくて、演技もできなければならないですから。

古賀この『BASARA』のキャラクターもそうですが、キャラクター性のほうが重視される作品もあります。格闘スタイルが○○拳だとしても、その拳法よりも“その人物が○○拳を使うこと”が主軸になるわけですから。僕にいろいろと教えてくださった先生がよく“守破離”という言葉を言っていたんです。まず基本を守って、それを破って、そこから離れることを繰り返せと。アクションも“守”だけをやっていると、壊して作っていけないなと思っています。『BASARA』のキャラクターの動きは、壊して何周もした結果の動きだから、僕はすごく楽しいんですよ。山本さんたちには、自分たちの発想や概念、自分で勝手にかけているブレーキを外していただいています。

山本いつも無茶なことばかり言っています(笑)。

古賀いえいえ(笑)。例えば、長い刀を背中に背負っている人物がいたら、自分たちだったらまず、「これだけ長いと抜けないじゃん」と思ってしまうわけです。でも山本さんは「あ、コレ、鞘がパカッと割れます」って(笑)。僕たちも「ああ! そうか!」と(笑)。この話なんかはまだほんの一部で、そういったことが山ほどありました。そういう経験を積ませていただいていると、他のアクションをやっている人たちとは全然発想が変わってきたみたいで。『BASARA』の撮影は、いつも新鮮ですし、盲点を突かれる感じです。

山本ゲームならではってところですね。リアル系や映像作品とも違いますし。

古賀僕たちもこだわってやっていますけれど、そのこだわりのラインが難しいんですよね。こだわりなのか、エゴなのかといつも悩みます。自分が求めている動きをアクターが表現しづらいときに、追求していくのは葛藤ですね。「難しいかな、でもこうしたらもっとよくなると思うしなあ」って。

山本僕もそうですね。こだわりがエゴだったとしても、その集大成はいい作品になっているかもしれないと思いながらやっています。

古賀葛藤のなかでも、信念を持って「こうして!」って言わないとブレちゃいますしね。

山本そうですね。なるべく客観的な目で見るようにしながら、こだわりを明確にしてからお願いするようにしないとなと思っています。ただ、90点のものを2週間かけて95点にしても、分かる人ってごくわずかだよというのであれば、90点でオーケーにしていたりはします。それでも、目指すところは100点という想いでやっていかないと。方向性も迷ってしまいますから。

古賀まったくその通りですね。そういえば、声優さんの収録も山本さんが立ち会われるんですか?

山本ええ、ずっとついています。今回、キャラクターの若いときの声も、これまでの声優さんに演っていただいていて。梵天丸も中井和哉さんにお願いしています。中井さんも若い声なので、最初、梵天丸の声はもっと高い、子供らしい感じだったんですけど、弁丸を見下して欲しいので、もう少し年齢を上げてもらいました。そういう微妙なラインを最初の声作りの段階で決めていきました。

古賀ジャンルは違いますけど、インゲームアクションと似ていますね。全体的な軸をどこに持っていくかとか。

山本アクションもボイスも、キャラクター作り、世界観作りのひとつだなと思っています。ですので、収録現場では毎回僕自身も鍛えられますね。

古賀そのときアクター個人から出る“何か”によってもまた変わってきますしね。ですので、アクター選びも慎重になります。タイミングとしてもまだ作品の全体が見えていない状態ですから。

――アクター選びはいつも制作初期の段階ですね。古賀さんにも一緒にキャラクターを作っていただいているという過程でもありますよね。

古賀打ち合わせでは勘も大事だったりします(笑)。山本さんたちが言葉を発しているときの雰囲気とか、使っている擬音とかは大きなヒントになりますね。そんな感覚の話なんですけど、今回のアクターのひとり、田中大登くんは僕が言わんとすることをすぐ理解してくれるんです。あるとき「説明していないのに、どうして分かるの?」って聞いたんですが、「古賀さん、言っていますよ」って……。僕、言葉に出しての説明はあんまりしていないんですが、「バアッ、バァッ!」とか擬音を言っていて。彼にはそれがそのまま伝わっているみたいです。言葉にしなくても。だから、彼とは原始的なところで繋がっているのかもしれません(笑)。

山本やはりセンスなんでしょうかね。キャプチャーの動きは、ゲームに落とし込むときに長さなどを調整したりもしますけど、ほとんどは撮影したもので決まりますよね。もう1回キャプチャーを撮り直すのもなかなかできないですし、いわゆる“手付け”とかもキャプチャーの自然さには負けてしまいますし。ですので、僕にとってはキャプチャー撮るのがキャラクター作りの本番だと思っています。例えここで撮った動きにモーションマンがどんなに手を入れたしても、元の動きが軸ということは変わりませんから、本当に大事なところなんです。ですからキャプチャーでどれだけ作り込めるかにかかっています。

古賀その大事な部分が、長い開発期間のなかのたった1日で決まることもあるわけですね。

山本そうなんです。だからかなりプレッシャーがかかりますね。その日1日の、一発勝負でもあるので。キャプチャーはライブと言ったところには、そういう意味もありますね。ボイス収録も限られた時間のなかで録りきらないといけません。ですので収録では、僕たちも本気です。

古賀僕たちにとって収録は日常でもあるので、今の言葉で気が引き締まりました。それにしても、改めて動画を観たりすると、よく1日でこんなにおもしろいものが撮れたなって思いますよ。すごく内容が濃いですよね。収録方法も、あるものを使って何とかやってのけているし。自分が言うのもおこがましいですが、「天才じゃないか、僕ら」って思うくらい、研ぎ澄まされているんだなって感じます(笑)。

山本そう思いますよ(笑)。古賀さんもバンバンいいアイデアを出してくださるし。

古賀なかにはキャプチャーだからこそっていう動きがあるじゃないですか。意外とアクロバティックな動きとかだと、手付けのほうがキレイに表現できることもありますが。キャプチャーならではの、手付けではできないところっていうのを、自分たちもよくわかっていないとな、と思っています。

山本手付けにも限界がありますからね。それに、重心移動だけでも、キャプチャーの動きがひとつ入るとリアリティーが全然違います。本当に、皆さんもゲームの中身、キャプチャーを知ったらおもしろいと思うんですよね。それにゲームとキャプチャー、ゲーム業界とキャプチャーの世界って、やっぱりいい関係だなって思いますね。ぜひ今後ともよろしくお願いいたします!

古賀こちらこそ! 僕自身としては、今後、後進の育成にも力を入れていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

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